[第12場面 、リッチモンド公爵夫人の舞踏会]
ブリュッセル 1815年6月15日
リッチモンド公爵夫人 : 「叔父が全連隊の将兵を 見せてくれたの」
リッチモンド夫人 : 「じっくり見て回って 好みの将兵を選んだわ」
公爵夫人の娘サラ : 「大男を選んだわね ママ」
ウェリントン公爵 : 「君は最高の将軍だ」
リッチモンド夫人 : 「女はタイコを追うだけよ」
「人気の中心は今や軍人だわ」
ウェリントン : 「社交界も変わったな」
リッチモンド夫人 : 「軍人はイギリスの柱よ」
ウェリントン : 「クズさ」
「ロクでなしの集まりだ」
「勇気のもとは酒だ」
リッチモンド夫人 : 「あなたのために 死ぬんでしょう」
ウェリントン :
リッチモンド夫人 : 「義務感から?」
ウェリントン :
リッチモンド夫人 : 「ナポレオンの部下でも 義務感からは死なないわ」
ウェリントン : 「奴は紳士じゃない」
リッチモンド夫人 : 「それが紳士の言葉?」
ウェリントン :「将兵を扇動するのは 巧みだが」
「戦場で 5万人分の価値をもつが」
「紳士ではない」
サラ : 「パリに着いたら ちょっと ナポレオンに会わせて」
「ママが崇拝しているの」
リッチモンド夫人 : 「私はボナパルト派よ」
サラ : 「怪物だって ほんと?」
少女の会話としてこっちのほうが格段にいい。
ウェリントン : 「彼は王冠を食い」
「血を飲む」
リッチモンド夫人 : 「怪物退治に いつ出かけるの?」
ウェリントン : 「まだ決まらない」
「それは・・・」
[第13場面 、越境する北方軍]
ナポレオン : 「川を渡れば 明日はブリュッセルだ」
ネイ : 「神も味方です」
ナポレオン : 「神なぞ無関係だ」
こういうズバッと言うのがナポレオン調。
[第14場面 、舞踏会を乱す者たち]
リッチモンド夫人 : 「ヘイを戦死させないで」
ウェリントン : 「婚約者か」
リッチモンド夫人 : 「娘が花嫁衣装ではなく 喪服を着ることになるわ」
サラ : 「おみやげは 甲騎兵のヘルメットですって」
「甲騎兵」は「胸甲騎兵」の間違い。
「血がついていないものよ」
リッチモンド夫人 : 「それなら 私も一つ欲しいわ」
これはこれでわかりやすくてよい。
ポンソンビー少将 : 「フランス兵のどこを刺す?」
ヘイ : 「わきの下です」
サラ : 「頼もしいでしょう」
ピクトン中将 : 「甲騎兵に会っても戦うな」
「それが 生き残るための手だ」
「ヘルメットは諦めろ」
「格闘術は フランス兵の方が上手だ」
ピクトン : 「マダム 失礼します」
ピクトン : 「あんなガキは初めてだ」
二人に対して言っているので「ガキども」が正しい。
サラ : 「礼儀知らずな将軍ね」
ウェリントン : 「敵をよく知っている」
サラ : 「味方を知らないのに?」
意訳だがシーンに妙にあってる。三文ともに少し変えているので、直訳調よりもいい。
マッフリン男爵 : 「ナポレオンがついに・・・」
ウェリントン : 「わかっている 国境を越えたんだな」
マッフリン : 「仏・プ両軍の間を 全軍で進撃しています」
「仏・プ」なら国境をということになろうが、やはり軍のことなので「英・普」の間違いだろう。
「英・普両軍の間を 全軍で進撃中です」
ウェリントン : 「場所は?」
マッフリン : 「シャルルロア」
ウェリントン : 「シャルルロア」
リッチモンド夫人 :「舞踏会を中止に?」
ウェリントン : 「そんな必要はない 踊り終えてからでいい」
ウェリントン : 「騎兵隊と シャルルロアへ行け」
「ピクトンの師団も出動」
ウェリントン : 「シャルルロアか」
マドレーヌ・ホール : 「私も一緒に連れてって」
「スペイン戦線では 許されたそうよ」
「スペインでは許されたわ 新婚なのに・・・」
ウィリアム・デランシー大佐 : 「戦場だよ」
マドレーヌ : 「でも心配だわ」
ウェリントン : 「簡単だと思ったが」
「夜間では 敵の動きが つかみにくい」
「果敢な作戦で 一本取られた感じだ」
3文ともきちんと訳されている。
ウェリントン : 「プロシア軍がベルギーに 踏みとどまるなら 我が軍もだ」
マッフリン : 「そう約束すれば プロシア軍も退かんでしょう」
ウェリントン : 「道路が集まる」
デランシー : 「カトル=ブラがカギです」
ウェリントン : 「そこで食い止めるか」
「ここでだ」
ウェリントン : 「シャルルロアか」
「敵もやるもんだ」
[第15場面 、両会戦は決定打を欠いた]
ナポレオン : 「戦場は悲惨だが」
「プロシア軍1万6千の戦死は パリには朗報だ」
ネイ : 「ウェリントンを カトルブラで撃退しました」
ナポレオン : 「君はなぜここに?」
ネイ : 「報告に来ました」
ナポレオン : 「なぜ敵を追撃して 徹底的にたたかん」
ネイ : 「約束の増援は?」
ナポレオン : 「口答えするな!」
「生意気な!」
「敵に余裕を与えれば 今までの勝利がムダになる」
[第16場面 、プロシアの前進元帥]
グナイゼナウ将軍 : 「ブリュッッハー元帥 退却命令を・・・」
ブリュッヒャー元帥 : 「わしは72歳だが 誇りは失っておらん」
「この剣はわしの 誓いだ」
「この剣に復讐を誓う」
「捨てることはできん」
右と同じ。
グナイゼナウ : 「イギリス軍の退却で 我々は孤立しそうです」
「ナミュールに退却できますが イギリス軍は信用できません」
「私の部隊には ワーブルへ退却を命じました」
「ウェリントンですが」
「閣下の信頼に値しません」
内容がわかりずらい。特にナミュールとワーブルの関係について言葉足らず。
「イギリス軍が逃げ出せば 我々は破滅です」
「しかし安全なナミュールに 退けば 敵の思う壺」
「危険ですが 私はワーヴルへの後退を命じました」
「まだ勝算はありますが」
「ウェリントン次第です」
[第17場面 、右翼軍の分遣]
ナポレオン :「グルーシー」
「ジェラール」
「3万の兵をやる」
「我が軍の3分の1だ」
「ブリュッハーの プロシア軍を追撃しろ」
「捕捉して 徹底的にたたけ」
「徹底的に追い詰め 合流させるな」
グルーシー元帥 : 「敵の退路は10通りもあります ワーブル・・・ ナミュール・・・」
ジェラール将軍 : 「鳥の群れとは違います 必ず捕捉できます」
ナポレオン : 「議論は要らん」
「戦場での対立は 敗北を招く」
「グルーシー ジェラール 行け」
[第18場面 、名誉ある退却]
プロシア兵A : 「今度はナポレオンに勝つ」
プロシア兵B : 「ブリュッハーが勝つ」
プロシア兵C :
プロシア兵D : 「敗北を勝利に変える将軍だ」
[第19場面 、後退するウェリントン]
ウェリントン : 「ブリュッハー老将軍が 18マイル後退したか」
「我々もそうしよう」
英軍士官 : 「後退だ」
デランシー : 「祖国では 我々は敗者にされますよ」
ウェリントン : 「やむおえん」
兵卒トムリンソン : 「バカげてるぜ」
兵卒マクケビット : 「お偉方の命令だ」
兵卒オコーナー : 「敵にやられたのは プロシア軍だぜ」
「なぜ逃げるんだ」
ウェリントン : 「退却する部隊には 不満がつきものだ」
デランシー : 「敵の攻撃を 受けていないからです」
ウェリントン : 「士気盛んだな」
ゴードン公爵 : 「銃剣を持っているからです」
「スコットランド兵は みんな単純だ」
ゴードン : 「全員 近所の農民だ」
「私を”旦那”と呼んでいる」
「みんな家の子も同然だ」
「儂を”旦那”と呼んでいる」
[第20場面 、暗雲 ]
ナポレオン : 「あれは全軍だ」
ネイ : 「まだ配置中です」
ナポレオン : 「敵がミスを犯している時は 黙ってよう」
ナポレオン :
「礼儀に反するからな」
[第21場面 、ウェリントンとピクトン]
ピクトン : 「後ろに林があるから ここは不利な位置です」
「後退する時に障害になり」
「全軍がバラバラになる」
ウェリントン : 「下草がないから」
「砲兵隊でも通過できるし」
「全軍がたやすく通れる」
ピクトン : 「自殺行為です」
ウェリントン : 「ピクトン 君は知らんが」
「私は以前ここへ来た」
原文のセリフは確かに一年前と言っているが、一年前にきたのはパリ駐在大使としての短い期間で、それ以前にウェリントンは学生時代にブリュッセルに住んでいた。ここは原文どおりよりもその辺の事情をくんで、「以前」とした方が、「地理に詳しい」ということに説得力がでる。
「地理には詳しいんだ」
[第22場面 、先入観にとらわれたナポレオン]
ナポレオン : 「ウェリントンは作戦に暗い」
「奴は戦史に暗いな」
「林を背負って 不利な位置だ」
「戦う必要もない」
「今夜 逃げるだろう」
[第23場面 、背嚢の子豚]
兵卒オコーナー : 「さあ 来い」
「料理して食ってやる」
子豚 :
兵卒オコーナー : 「静かに! おれは半分しか食わない」
「静かに! 半分はお前にやるから」
子豚 :
デランシー : 「失礼ですが」
「部隊にもっと行動予定を 知らせるべきでは?」
ウェリントン : 「無理だ 私の頭の中は 髪の毛でさえ知らん」
「どうかな」
「私は頭の中を 髪の毛にさえ教えん」
デランシー : 「なじみの部隊です」
ウェリントン : 「アイルランド兵か」
「暴動を何度も取り締まったものだ」
「随分 手を焼やかされたものだ」
これは新版の字幕を見る数年前から書いてました。
デランシー :
ウェリントン : 「こんばんは」
兵卒オコーナー : 「いい夜で」
ウェリントン : 「背のうを見せろ」
兵卒オコーナー : 「私で?」
ウェリントン : 「そうだ」
兵卒オコーナー :
ウェリントン : 「開け」
兵卒オコーナー :
兵卒オコーナー : 「なんと!」
「これは・・・」
「変だと思いました 背中がかゆいもんで」
ウェリントン : 「どこで分捕った」
兵卒オコーナー : 「これ?」
ウェリントン :
兵卒オコーナー : 「いえ 違います」
「こいつが 私を捕まえたんです」
ウェリントン : 「掠奪の罪を知ってるな」
兵卒オコーナー : 「禁酒です」
ウェリントン : 「死刑だ」
兵卒オコーナー : 「報告します」
「この子ブタが 迷子になったので」
「私が両親を捜してやって いるところです」
ウェリントン : 「絶望的状態でも諦めん」
「伍長にしろ」
英軍兵士D : 「今度はヤギを盗め 軍曹になれるぞ」
ウェリントン : 「あんな連中に戦争が できるか 心配だ」
ウェリントン : 「ひどい夜だ」
「明日もだろう」
ウェリントン : 「デ・ランシー」
デランシー :
ウェリントン :
「明日 もし敗れたら」
「私を許す者は 神しかいないだろう」
内容は右と同じだが、文章としてはるかに技量が上。
[第24場面 、総司令官たちの不安]
ナポレオン : (なぜ 移動しない 理由がわからん)
(用心深さを失ったのか 私の知らん何かがあるのか)
ウェリントン : (プロシア軍がグルーシーの追撃を 逃れれば 勝機が訪れる)
「すべてが プロシア軍次第だ」
ウェリントン : 「泥は敵の行動を遅くする」
「だがプロシア軍が遅れれば おしまいだ」
ナポレオン : 「道路条件は同じだと グルーシーには言いたいが」
わかりやすくていいです。
「事実か」
ナポレオン : 「事実か」
スルト : 「はい」
ナポレオン : 「速く歩けと伝えろ」
これが普通だと思うけど・・・。
マッフリン : 「閣下も戦闘に参加して ください」
ウェリントン : 「グルーシーの3万の敵軍は どこにいる?」
マッフリン : 「我が軍を発見できずに 苦労しています」
マッフリン :
両方に言えることだがこれも訳して欲しい。
「我が軍を追って 泥の中を・・・」
「しかし合流を阻める地点には 達してません」
ウェリントン : 「何時だ」
ヘイ : 「2時過ぎかと・・・」
デランシー : 「10分前です」
ウェリントン : 「マッフリン 頼む」
「今夜もう一度 連絡に出てくれ」
マッフリン : 「新しい馬をください」
ウェリントン : 「頼む」
「プロシア軍を1時までに ワーテルローに呼びたい」
ピクトン : 「わかるか」 「アクスブリッジ」
「グルーシーの軍が 間に割って入り・・・」
アクスブリッジ : 「プロシア軍をたたけば・・・」
ピクトン : 「我々まで 絶対絶命の危機におちいる」
アクスブリッジ : 「その危険を冒してまで プロシア軍を頼りに?」
ウェリントン : 「我々はお互いに 助け合わねばならん」
ウェリントン : 「解散」
ウェリントン : 「誰に時計をやった」
ヘイ : 「サマーセットです」
「時計はどうした?」
「友人に託しました」
サマーセット(舞踏会シーンの冒頭でヘイと談笑していた相手)という人名が登場するところをみると、この二人の会話シーンがもともとはあったのかもしれない。この際、人名は省いたほうが分かりやすい。
ウェリントン : 「明日 死ぬつもりか 不吉だぞ」
「そうした行為は 往々にして死を招く」
ウェリントン :
「明日は5分毎に 時間を聞くぞ」
ネイ : 「軍医を呼びましょう」
ナポレオン :
ネイ : 「軍医を」
ナポレオン : 「いや」 「要らん」
「軍医は要らん」
ナポレオン : 「何を見ている」
「何だ」
ナポレオン : 「行け」
「早く出ろ」
「全員だ」
ナポレオン : (病に倒れてはいかん)
(明日のために力を・・・)
ナポレオン : (肉体は死にかけても 頭脳はまだ切れるぞ)
ナポレオン : (永久に降りやまんのか)
[第25場面 、6月18日の朝]
英軍兵士E : 「我々は14万だ」
英軍兵士F : 「その半分さ」
英軍兵士E :「フランス軍も入れて14万さ」
英軍兵士F : 「うち4万は死ぬ」
英軍兵士E :「死ねばスープも飲めないぞ」
英軍兵士G : 「おい 新しい伍長様だ」
英軍兵士H : 「おはよう 伍長」
英軍兵士I : 「口もきいてくれねえ」
英軍兵士J : 「朝食は子豚か」
マーサー大尉 : 「おはよう」
ラムゼー大尉 : 「おはよう 大尉 ひどい晩でした」
[第26場面 、プランスノワの鐘]
ナポレオン : 「おはよう」
ナポレオン : 「これだ」
ナポレオン : 「なぜ見つめる」
ネイ : 「ご気分は?」
ナポレオン : 「昨夜は昨夜だ」
ナポレオン : 「最高の気分だ 食事にしよう」
ナポレオン : 「もっと大きなナプキンが 要るぞ」
ナポレオン : 「朝 出撃できるか」
スルト : 「正午までは地面が・・・」
ナポレオン :
ネイ : 「泥道を進んだこともある」
ナポレオン : 「あるとも」
ナポレオン : 「何だ」
ラベドワイエール : 「教会で日曜日のミサを・・・」
ナポレオン :
「信者が集まらんだろう」
[第27場面 、泥濘による遅延]
ナポレオン : 「眠ってはおらんぞ」
ドルーオ : 「陛下 4時間待たないと 大砲を移動できません」
ナポレオン : 「4時間待てば勝てん」
「機を逃せば勝利はない」
ネイ : 「ウェリントンの部隊など 取るに足りません」
「イギリス・ベルギー その他の寄せ集めだ」
「ウェリントンなど1時間も持たんでしょう」
「所詮 奴等は 寄せ集めの部隊です」
ドルーオ : 「大砲を失う恐れが あります」
ナポレオン : 「お前が大砲だ」
ドルーオ : 「12時に攻撃を・・・」
ナポレオン : 「戦闘には時機がある」
ドルーオ : 「敵が動けば 放っておけませんが」
「泥を頼みに停止しています」
ナポレオン : 「泥を頼みに?」